消化器疾患
当院では、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、膵臓と幅広い消化器領域の疾患を診療いたします。
また、消化器病学・消化器内視鏡の専門医として苦痛を抑えて楽に受けられる胃カメラ・大腸カメラ検査を行っています。
特に静岡県では数少ないAIによる画像診断システムを搭載した内視鏡カメラを導入しているため見分けがつきにくい消化器疾患の早期発見も可能ですので、気になる症状がある方や健診で異常を指摘された方は、ぜひ当院の内視鏡検査を受診ください。
このような症状のある方はご相談ください
- 食後のつかえ感
- 食前や食後の心窩部痛・胃痛・胃もたれ
- 胸焼け
- 吐き気・嘔吐
- 下腹痛、食欲不振
- 下痢や便秘などの便通異常
- 下血・血便
- 体重減少
消化器内科で対応する主な疾患
食道
咽喉頭腫瘍
咽頭がんや喉頭がんは消化器内科の担当の疾患ではありませんが、胃内視鏡検査でスコープを挿入する際に、喉の観察が可能です。
疑わしい所見が認められた場合には、耳鼻咽喉科を受診していただきます。
逆流性食道炎/胃食道逆流症
逆流性食道炎/胃食道逆流症とは、食道の内部に胃の内容物が逆流することで、食道粘膜が荒れてしまったり、煩わしい症状がひきおこされた状態です。
原因
食道裂孔ヘルニアや肥満、また、降圧薬が原因になることもあります。
診断
診断は症状の問診と内視鏡検査で行います。
治療
胃酸の分泌を抑制する薬や、食道・胃の動きを助ける薬の内服が治療として一般的です。
また、食生活や生活習慣の改善が重要です。
バレット食道
胃酸が食道に逆流を繰り返すうちに、胃粘膜が徐々に食道側に伸びていった状態です。
逆流性食道炎の10~20%に認められます。
頻度は低いですが、がん(バレット腺がん)が発生することがあります。
治療
胸焼け症状等が強い場合には、胃酸分泌抑制薬の投与を行います。
好酸球性食道炎
食道の上皮層中に多数の好酸球の浸潤が慢性的に持続する疾患です。
原因
原因としては、食物等へのアレルギー反応が考えられています。
症状
症状としては、食べ物のつかえ感があります。
治療
上部消化管内視鏡検査にて縦走溝、白色滲出物、輪状ひだなどの所見が観察されます。
食道粘膜の生検を行って診断します。
治療はPPIやステロイドの局所投与を行います。
アカラシア
聞き慣れない病名かもしれませんが、食道の重要な病気の一つです。
食道下端部の輪状筋が持続的な緊張状態になって食道の噴門(胃の入り口)が弛緩しなくなった病態で、食べ物が通過しにくくなったり、食後に嘔吐したりします。
診断と治療
診断はレントゲン検査やCT検査、内圧検査で行います。
内視鏡検査で食道内腔の拡張や、食道内に食物残渣が残っていることで気がつきます。
状態に応じて、専門病院での治療をお願いすることがあります。
食道がん
食道がんは、アルコールを飲むと赤くなってしまう方や喫煙者に多い食道扁平上皮がんと胃酸の逆流が原因の食道腺がんの二つに分けられます。
食道がんは進行するととても予後の悪い疾患であり早期発見が重要です。
しかし、早期の病変は無症状です。早期発見のためには積極的に内視鏡検査をうけていただくことが必要です。
当院ではAI診断機能を有する内視鏡検査システムがあり、特に食道がんの早期発見に役立つ特殊光での観察が可能であり、食道がんの早期発見に積極的に取り組んでおります。
胃・十二指腸
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアとは、内視鏡検査等で胃に異常は認められないにもかかわらず、煩わしい胃痛や胃もたれ感がある状態を示します。
院長は長年にわたり機能性ディスペプシアの診療をしてきました。
ガイドラインを遵守しつつ、個々の患者さまに適した治療を行います。
胃炎
急性胃炎
ストレスや薬物、暴飲暴食が原因で胃の粘膜が急に傷害された状態です。
確定診断には胃内視鏡検査を行います。
胃酸分泌抑制薬や粘膜保護等の内服薬での治療を行います。
表層性胃炎
胃の粘膜に発赤や軽度のびらんを認める状態です。
胃酸やストレス、薬剤が原因となることが多いです。
多くは無症状ですが、上腹部の違和感や鈍痛がある場合には、胃酸分泌抑制等での薬物療法を行います。
萎縮性胃炎
胃の粘膜の慢性炎症によって胃の粘膜が荒廃して薄くなってしまう状態です。殆どが後述するピロリ菌の持続感染によるものです。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃過形成ポリープから、胃がんや胃MALTリンパ腫等の多彩な疾患の発生母地となるため、ピロリ菌の感染が確認できれば除菌療法を行います。
自己免疫性胃炎
抗壁細胞抗体や抗内因子抗体が陽性で自己免疫機序によって胃の壁細胞が傷害され、主細胞も消失してしまうため、胃体部の高度な萎縮を呈する疾患です。
ピロリ菌による萎縮性胃炎の重症例とも類似したり、ピロリ菌の感染が合併することもあり、しばしば見落とされがちな疾患です。
ビタミンB12や鉄が欠乏したりします。胃のカルチノイドや胃がんの発生リスクも高いです。
また、自己免疫性の甲状腺疾患を約半数に合併するなど、全身性の疾患であることもあります(多腺性自己免疫症候群IIIb)。
院長の古田隆久は、本疾患の日本の診断基準の策定にも関わっており、確実に診断し対応いたします。
特殊型胃炎
好酸球性胃腸炎の胃病変や肉芽腫性胃炎、膠原繊維性胃炎、クローン病の胃病変等、種々のタイプの胃炎があります。
院長の古田隆久はこれらの胃炎の診断経験がありますので、難しい胃炎も診断し、適切に対応します。
胃アニサキス症
サバ、イカ、イワシ、アジ、タラ等、鯨やイルカの好物となる魚類を生で食べた際に、アニサキス幼虫も摂食してしまい、それが、胃壁に食いついてアレルギー反応を起こした状態です。(ヒラメやオコゼにはアニサキスはいません)。
治療
内視鏡検査で虫体を発見したら鉗子で除去します。
放置しても数日で症状が軽快しますが、まれに肉芽腫を形成することがあります。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍
胃や十二指腸の粘膜が種々の要因で傷害されて脱落してしまった状態です。
粘膜深層の血管にまで及ぶと出血したり、さらに深くなると穴が空いてしまいます。
粘膜を傷害する主要因に、ピロリ菌の感染や解熱鎮痛剤(NSAIDs)が上げられますが、それ以外にもストレスや動脈硬化、感染等が知られております。
症状
胃の辺りの強い痛みやげっぷ、胸焼け、お腹の張りなどが症状として現れます。
症状がひどく、潰瘍部分から出血があると黒褐色の血を吐くこともあります。
診断
胃内視鏡検査で胃の粘膜の状態を観察して行います。
治療
原因の除去(ピロリ菌の除菌、原因薬剤を可能なら中止)に加えて、胃酸の分泌を抑制する薬や粘膜を修復する薬などで内服治療を行います。
潰瘍から出血している場合には胃内視鏡検査時に止血処置を行います。
胃がん/胃腺腫
胃がんは、胃の粘膜上皮細胞が異常増殖して発生する悪性腫瘍です。
現在でも日本人では毎年13万人以上の方がかかり45000人程度の方が亡くなっております。
ただし、早期に発見して適切な治療を行うことができれば、ほとんどは救命可能ながんです。
胃がんの早期発見
胃がんの早期発見のためには定期的な胃内視鏡検査が必須です。
当院では苦痛の少ない内視鏡検査を行うことで、胃がんの早期発見に努めております。
また、胃がんの99%にピロリ菌の感染が関わっています。
当院ではピロリ菌の除菌を積極的に行っており、胃がんのリスク低減に努めております。
胃腺腫とは
がんと正常組織の中間的な位置づけです。
がん化するリスクがあり、診断されれば、内視鏡的な切除の適応となります。
十二指腸腺腫・がん
十二指腸にも腫瘍ができます。
早期の場合には、ほぼ無症状ですが、進行すると食事が通りにくくなったり、悪心嘔吐といった症状が出現したり、また、出血して気づかないうちに貧血になることもあります。
十二指腸がんは早期で病変が小さいときは症状がないことがほとんどです。
早期の発見のためには、無症状であっても胃の内視鏡検査が必要です。
当院の発見症例も、別の理由で内視鏡検査を受けて見つかっております。
発見されたら、専門施設に紹介し、適切な治療を行ってもらいます。
上腸間膜動脈症候群
腹腔動脈から分枝する上腸間膜動脈が腹部大動脈とのあいだで十二指腸の水平脚を圧迫して、通過障害が生じた状態です。
ダイエットにより過剰にやせている女性や、病気により急激にやせた際に発症します。
神経性食思不振症と間違われることがあります。
診断
内視鏡検査時に胆汁性の胃液が多く貯留していることで気づき、腹部超音波検査やCT検査で十二指腸と上腸間膜動脈と腹部大動脈の状態を確認して行います。
体重減少が原因の場合には、適切な体重増加を図ります。
症状は体位で改善することがあります。
治療
内服治療は腸蠕動亢進薬や整腸剤で対応します。
重症例には手術も検討します。
小腸・大腸・肛門
下痢
下痢は、水分量の多い便を頻回に排出する状態で、種々の原因によります。
原因
- 乳糖不耐症やアルコール飲料の刺激で腸からの水分吸収が妨げられた場合に下痢になります。
- 細菌やウイルスが感染するとその産生する毒素や炎症によって腸液の分泌が増えて下痢となります。
- 腸の運動が活発となって、水分の吸収が不十分の場合にも下痢になります(蠕動運動性下痢)。
- 緊張した時の下痢や、下痢型の過敏性腸症候群やバセドウ氏病のときに下痢が該当します。
- クローン病や潰瘍性大腸炎のように腸に炎症があると、粘液分泌が増えたり、細胞液が漏出したり、水分吸収が低下して下痢となります。
- 抗生物質や、抗がん剤、その他の薬も下痢を引き起こすことがあります。
診断
最近急に発症したのか、以前からあるのか、脱水になっていないか、下痢便に血が混ざっていないか、発熱があるか、同じものを食べた人はどうなのか、等々を参考に、血液検査や場合によっては大腸内視鏡検査を施行して診断します。
治療
治療は、原因によって異なります。
感染や刺激物による場合には、下痢によって原因菌や原因物質を排出しようとしているので無理に下痢を止めてしまうと病気が悪くなることがあります。
脱水に注意しつつ、水分摂取をすすめながら適切な薬物療法を行います。
便秘
便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態。」と言われております。
便秘でない方の方が、便秘症の方よりも長生きするともいわれております。
便秘症の場合、体重が減ったり、急に便秘なったり、便に血が混じるような場合には、腸にやっかいな病気が隠れている可能性がありますので、大腸の検査をすることがあります。
治療
便秘のかたには、適度な運動や繊維質の多い食事、水分摂取を勧めたり、生活のリズムを整えてもらう等の生活指導をします。
その上で、必要に応じて便秘の治療薬を処方します。
現在、数多くの便秘薬がありますので、個々の患者さまに適したおくすりの処方をいたします。
過敏性腸症候群
大腸に症状の原因となる異常がないにもかかわらず、慢性的に腹痛や腹部不快感がある状態です。
排便によって改善したりします。
症状
発症時には、排便の頻度が変わります。
便の形状がかわることもあります。
診断
正確な診断には、大腸内視鏡検査で大腸に異常がないことを確認する必要があります。
大腸憩室
大腸憩室は、大腸粘膜の血管が集まって大腸壁を貫いているところが腸管内圧によってへこんだものです。
特に、上行結腸やS状結腸にできやすいです。
血管が集まってきているので、憩室に傷がつくと出血しやすいです。
憩室の中で細菌が繁殖し炎症をおこすと憩室炎となります。
憩室は筋層を欠いているため、穿孔しやすく、膿瘍や瘻孔を形成したり、腹膜炎に発展することもあります。
原因
憩室は加齢とともにその頻度が上昇しますが、特に喫煙、肥満、便秘が挙げられます。
食物繊維の多い食事を摂取し、体を動かすことが肝要です。
虚血性大腸炎
多くは便秘や下痢が原因で、S状結腸に負荷がかかり、循環障害が起こって、大腸が虚血状態になり、まず粘膜が壊死し脱落します。
重症になると腸全体が壊死することもあります。
症状と診断
腹痛と血性下痢を呈します。
内視鏡検査をすると縦走傾向のある粘膜傷害を認めます。
重症となるとほぼ全周性になることもあります。
治療
治療の基本は腸管の安静です。固形物の摂取は控えていただき、整腸剤と経口補水液と経口の液体の栄養剤で数日間療養してもらいますが、粘膜傷害が重篤な場合には、入院していただくことがあります。
徐々に通常の食事に戻していきます。1-2週間で状態は安定します。
予防するには
便秘や下痢にならないように、規則正しい排便習慣、暴飲暴食を避けることです。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患とは、慢性的に腸の粘膜に炎症を引き起こす病気の総称で、感染性の腸炎は含めず、一般的にはクローン病と潰瘍性大腸のことを意味します。
クローン病
主に小腸と大腸が病変の主座ですが、口腔から肛門まで様々な部位に症状が出現します。
病変は正常粘膜を介して複数箇所に出現します(Skip Lesion)。
腹痛、下痢や血便、体重減少、また、貧血、発熱などがあると本症を疑います。
大腸内視鏡検査では小腸の一部も観察できるため診断が可能です。
治療は食事療法と薬物投与となります。狭窄のひどい場合には、専門施設での拡張術や手術を行います。
潰瘍性大腸炎
大腸粘膜が病変の主座で通常は直腸から連続する粘膜の発赤、びらん、潰瘍が認められます。
腹痛、粘液まじりの下痢、粘血便、体重減少、貧血などの症状を呈します。
大腸内視鏡検査にて診断可能です。
このときに細菌性の腸炎との鑑別のための細菌培養検査も行います。
治療は食事療法と薬物投与となります。
重症の場合には、専門施設で顆粒球除去療法や手術を行います。
炎症性腸疾患では悪性腫瘍の合併率が高いため、症状が落ち着いていても年1回の大腸内視鏡検査を推奨します。
大腸ポリープ
大腸ポリープとは、大腸粘膜から隆起したものです。全大腸に発生します。大きさは数mmから数cmに及ぶものもあります。
大腸ポリープは主に腫瘍性のポリープと非腫瘍性のポリープに分けられます。
腫瘍性ポリープ
主に腺腫性ポリープと悪性病変からなります。
腺腫性ポリープはがんではありませんが、将来癌化するリスクがあります。
そのため当院では発見された場合には、可及的に切除をする方針としております。
大腸ポリープは、40歳以降の方に多くみられ、高い確率で発生する部位は直腸やS状結腸といわれています。
ポリープの大きさは数mmの小さなものから数cmに及ぶものまで人によって異なります。
大腸ポリープは無症状であることが一般的です。
そのため、がん化するポリープを早期に発見・治療するには、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることが重要となります。
大腸がん
大腸がんは、大腸(結腸・直腸)の粘膜から発生する癌出、腺腫というポリープから発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。
進行すると、肝臓や肺やその他の臓器に転移したり、腹膜播種といってお腹の中に散らばるように転移することもあります。
症状
早期では、殆ど症状がありません。進行すると血便や、貧血、便が細くなる、等の症状が出ます。血便を痔と思い込むために進行するまで診断されないケースも多いです。
当院の検査
検診での便潜血検査がありますが、感度は100%ではありませんので、ご心配の方はご相談ください。
特に、家族歴に大腸癌のある方、また、50歳以下で癌になった方が血縁にいらっしゃる場合には、検査を勧めます。
検査は、当院では大腸内視鏡検査で行います。
肝臓・胆のう・膵臓
胆石症
胆石症は、胆嚢内に結石ができる胆嚢結石と、胆管のうち、肝内胆管内にできる肝内結石と肝外の胆管にできる胆管結石に分かれます。
胆嚢結石はコレステロールや肥満が関係したコレステロール結石が多く、胆管結石は胆道の感染が関連したビリルビン結石が多いです。胆嚢結石が総胆管に落ちてくることはあります。
胆石が総胆管で詰まったり、膵液の流出を妨げたりして胆管炎や膵炎を発症することもあります。
その場合には、内視鏡検査で結石を取り除いたりします。
診断
診断は、腹部エコー検査でわかります。精査が必要な場合には、専門病院でCT検査やMRI検査、超音波内視鏡検査等が行われます。
治療
胆嚢結石で1cm以下で石灰化が無い場合には、ウルソデオキシコール酸という内服薬で胆石が溶けることを期待します。
胆石症は、痛み等の症状がある場合には、手術を行います。
専門施設では体外衝撃波胆石破砕療法という方法で胆石を砕いて排石することも試みられます。
痛みがない無症状胆石の場合は治療を行わずに経過観察を行うこともできますが、高齢になってから胆嚢炎、胆管炎を発症すると敗血症を起こし易く致死的な場合もあるため、元気なうちに腹腔鏡下での胆嚢摘出術を勧めることがあります。
急性膵炎、慢性膵炎
急性膵炎
急性膵炎は、膵液に含まれる消化酵素で膵臓自体が傷害を受けてしまう状態で、膵とその周囲に炎症が及びます。原因はアルコール過剰摂取や胆石が知られています。
慢性膵炎
慢性膵炎は、アルコールの長期的な摂取等により慢性的に膵臓の炎症が持続することで膵の細胞が傷害されていく状態です。
診断
診断は、血液検査、腹部エコー検査で可能ですが、精査が必要な場合には、CTやMRI検査が行われます。
診断目的の内視鏡的な逆行性膵管胆道造影は治療を前提とした場合に限定されてきています。
慢性膵炎の方には、禁酒と低脂肪食をお願いしています。
慢性膵炎は膵がんのリスクも高く、定期的な腹部エコー検査を推奨します。
膵嚢胞
膵嚢胞は、膵内に嚢胞が形成されるもので、急性膵炎の後にできるような膵仮性嚢胞と癌との関連を考えなくてはならない膵真性嚢胞があります。
膵真性嚢胞には、後天性のものとしては、膵貯留性嚢胞(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)などがあります。
自己免疫性膵炎
自己免疫性膵炎は自己免疫機序によって膵臓が腫れる病気です。急性膵炎や慢性膵炎とは異なり、腹痛を起こすことはあまりありません。
総胆管が狭窄して黄疸が出現することがあります。半数の例で糖尿病を合併します。
自己免疫性膵炎の典型例では膵臓が全体的に腫れて、ソーセージ様の所見とも言われます。局所的に腫れる場合は膵臓がんとの鑑別が画像的には難しいですが、腫瘍のなかを主膵管が通っているかどうかは大きな違いで、エコーやMRI検査で判断します。
症状
膵臓以外に唾液腺、涙腺やリンパ節が腫れることがあります。
検査
血液検査ではIgG、特にIgG4が増加します。そのため、「IgG4関連疾患」と呼ばれており、胆管にも病変があることもあります。
自己免疫異性膵炎が疑われる場合には、関連病院にてCTやMRIなどの画像検査、場合によっては、膵臓の内視鏡検査、膵臓の組織検査を行って診断します。
(前任地経験症例)
治療
治療は、炎症を抑えるステロイドの内服を行います。数週間で膵臓の腫れは改善しますが、再燃防止のために少量のステロイドの内服を継続することが多いです。
胆道癌(胆嚢癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌)
胆道の癌は発生した部位によって呼び名が異なり、また、胆管癌は、肝内胆管癌、肝門部領域胆管癌、遠位胆管癌に分けられます。
症状
胆道癌の症状は、右脇腹の違和感、痛み、体重減少等です。黄疸が出現するのは、腫瘍が胆道を塞いでしまった時です。尿の色が濃くなり、逆に弁の色は白っぽくなります。
また、血液検査ではγ-GTPやALPが上昇します。CEAやCA19-9といった腫瘍マーカーも上昇します。
検査
画像診断は腹部エコー検査、CT検査、MRI検査をまず行います。さらに、超音波内視鏡検査や、胆道を造影したり、胆道内を内視鏡で観察することもあります。
治療
治療は病期分類に応じて、手術や放射線化学療法や、化学療法のみを選択します。
膵がん
膵臓がんは膵臓にできるがんで、多くは膵管の細胞から発生します。
別に紹介した、膵管内乳頭粘液性腫瘍とは区別されます。
他に神経内分泌腫瘍もありますが、ここでは膵がんについて説明します。
膵がんは年間4.4万人程度が罹患し、その5年生存率は8.5%と極めて予後不良の疾患です。
症状
初期では殆ど症状がありません。
進行すると、食欲不振、腹痛・背部痛、体重減少、下痢、黄疸などの症状が出現します。
膵がんでは糖尿病を併発したりします。
検査
血液検査では、CEAやCA19-9、DUPAN-2などの腫瘍マーカーやアミラーゼやエラスターゼI等が参考となります。
画像検査では腹部エコー検査があります。
ただし、腹部ガスや脂肪のために、膵全体の観察には限界があります。
疑わしい場合には、CT検査やMRI検査が必要となります。
治療
治療は手術可能であれば、手術を行いますが、手術が不可能の場合には、化学療法を行います。
当院では基幹病院と連携して膵がん治療も積極に支援いたします。
ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎とは、肝臓がウイルスに感染して炎症が起こる疾患です。
肝炎ウイルスは主に4種類(A、B、C、E型)存在し、それぞれ特徴が異なります。
いずれもウイルス感染による自己免疫反応によって肝臓の細胞が障害されます。
A型肝炎
- 貝類や海外旅行での飲食によって感染します。
- 急性肝炎の原因になりますが、劇症化する症例は少なく、慢性化することもありません。
ほとんどが自然治癒します。
B型肝炎
- 輸血や出産、刺青、性交渉、針刺し事故などにより感染します。
日本ではワクチンが導入されたため、若年者の感染は減少しています。 - 出産後、乳児期に感染するとキャリアになり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展する場合があります。
- 成人で感染した場合は急性肝炎となり、一部劇症化しますが、大部分は治癒します。
- インターフェロンや核酸アナログ製剤で治療します。
C型肝炎
- 輸血や血液製剤、刺青により感染します。
ワクチンはありません。
感染すると約70%はキャリアになり、慢性肝炎に移行します。
肝硬変や肝がんの最大の要因です。 - 経口薬で治療します。90%の方でウイルスを排除できます。
E型肝炎
- 豚、猪、鹿などの動物が保有するウイルスで、これら動物の肉を摂取することで感染します。
- 慢性化することは無く、ほとんどが自然治癒します。
脂肪肝、
非アルコール性脂肪肝炎
脂肪肝とは肝臓の中に中性脂肪が蓄積して肝障害をおこす病気です。
脂肪肝の原因はアルコール性脂肪肝と、ほとんどアルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪性肝疾患 (nonalcoholic fatty liver disease: NAFLD)に分かれます。
NAFLDは良性の経過をたどる単純性脂肪肝と、肝硬変や肝癌に進行する可能性がある非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis: NASH)に分かれます。
わが国にはNAFLDが約1,000万人、NASHが約100~200万人いると推定されます。
診断
NASHの確定診断には肝臓の生検が必要ですので、必要な場合には専門施設に紹介いたします。
NAFLDの患者さんでは、メタボリックシンドロームの状態の方が多く、内臓脂肪型肥満に高血糖、 脂質代謝異常や高血圧を合併しておりますので、言い換えれば、メタボリックシンドロームの肝病変と考えるべきです。
治療
治療の原則は、背景にあるメタボリックシンドロームの状態を改善することであり、食事療法、運動療法などの生活習慣の改善により、肥満、 糖尿病、脂質代謝異常、高血圧等を是正します。
さらに、抗酸化剤や糖尿病の治療薬、高脂血症の治療薬、肝庇護薬を併用します。
肝硬変
慢性肝炎では、肝細胞が傷害された後の修復で繊維化が起こり、これが進行すると肝臓が硬くなって肝硬変となります。
肝硬変では肝臓の機能が低下しており、浮腫や黄疸、腹水などが出現します。
食道静脈瘤も発生し、出血の原因となります。
肝硬変からは肝がんを発生しやすくなりますが、肝炎ウイルスが原因の肝硬変では特に高いです。
しかし、最近では、肥満による非アルコール性脂肪性肝疾患患者での肝がんが増加しています。
肝臓癌
(肝細胞癌と胆管細胞癌)
肝臓がんは、肝臓の細胞ががん化した肝細胞がんと肝臓の中を通る胆管ががん化した胆管細胞がんに分かれます。
肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪肝炎などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています。
症状
早期ではほとんど症状がありません。
従って、肝炎ウイルスに感染していたり、非アルコール性脂肪肝炎といわれた場合には、無症状でも定期的な血液検査や画像診断検査を受けることを推奨します。
検査
検査は肝臓がんでは、αフェトプロテインやPIVKA-Ⅱ等を測定します。
胆管細胞がんではCEAやCA19-9を測定します。
胆管細胞がんでは腫瘍の末梢側の胆管に狭窄の影響が出るため、肝胆道系の酵素の上昇もみられます。
画像診断は、腹部エコー検査、CT検査、MRI検査が行われます。当院では腹部エコー検査が可能です。
これらのがんが疑われた場合には、専門施設に紹介して、詳しい検査を受けていたただきます。
その後も、基幹病院と連携して診療を行うことができます。
- 掲載している写真につきましては、無断転載・複製禁止とさせていただきます。よろしくお願いします。