院長ブログ blog

臨症消化器内科に論文掲載されました。

2025.08.25

臨床消化器内科という医学雑誌があります。最新号(臨牀消化器内科 Vol.40 No.10)に私の論文が掲載されました。臨床消化器内科という雑誌は商業誌ですが1986年1月創刊で歴史のある医学雑誌です。これまでも数回執筆依頼があり、胃酸分泌抑制薬についてやピロリ菌の除菌療法に関する執筆依頼が多かったのですが、今回はピロリ菌の保険診療上の問題点についての原稿依頼があり執筆した次第です。要旨は以下の如くです。

論文の要旨:H. pylori感染の保険診療においてはいくつかの問題点がある.H. pylori感染関連疾患の診断がつかないとH. pylori感染診断が行えず,内視鏡検査を承諾できない患者での検査ができない.また,H. pyloriの抗菌薬感受性試験が査定される場合があり,クラリスロマイシン耐性の有無が不明のままにクラリスロマイシンを含むレジメンでの治療が行われている.そして,メトロニダゾールはその添付文書上の制限があり,一次除菌に使用することは困難である.また,二次除菌失敗後の救済療法や薬物アレルギーがあり標準療法での治療ができない場合のレジメンも保険診療外である.さらに,H. pylori感染と密接な関係にある胃炎マーカーの血清ペプシノゲンや,H. pylori胃炎との鑑別が問題となる自己免疫性胃炎の診断に必要な抗壁細胞抗体,抗内因子抗体の検査も保険収載されていない.多様なH. pylori感染関連疾患患者に対応していくためにも,これらの問題を解決する必要がある.

最初のピロリ菌の検査のタイミングの問題点について少し説明します。ピロリ菌の感染の有無を保険診療で行う場合には、ピロリ菌の関連疾患の診断がついていなくてはならず、現実的には胃カメラ検査を受けないとピロリ菌感染の有無を保険診療で行うことができないのです。日本ヘリコバクター学会はこの点について内保連経由で、内視鏡検査前に上部消化管症状のある場合に非侵襲的な方法でのピロリ菌検査が実施できるように長年にわたって提案してきました。しかし、なかなか提案が受け入れてもらえない状況が続いております。

 実臨床では、現在はピロリ菌の感染率が低下してきており、胃痛で受診された方に、胃カメラ検査を施行しても特に異常はなく、機能性ディスペプシアと診断される場合が多くなっております。一方で、内視鏡検査を勧めると断られることがあります。ですので、症状のあった時点でピロリ菌の検査を行い、ピロリ菌陰性の場合には、大きな胃の病気のリスクも少ないため、警告症状と言われるいくつかの重要な所見がない場合には、内視鏡検査を施行せずにしばらくは内服治療に対応してもよいかと考えます。最新の機能性ディスペプシアのガイドラインでも内視鏡検査は必須ではなくなっております。陽性の場合ではやはり内視鏡検査を受けたくない方でもピロリ菌陽性となれば、胃がんリスクがあるので、受けていただけると思います。内視鏡検査の効率を上げるためにも、そして、検診年齢に達しない若い方の胃がんの発見の推進ためにも胃カメラ検査前にピロリ菌検査ができるようにすべきと考えております。

そのほかにも、ピロリ菌の感受性試験や、メトロニダゾールの一次除菌での使用、ピロリ菌胃炎のマーカーであるペプシノゲン検査や抗壁細胞抗体の保険未収載等の問題点についてもふれました。

浜松医大を退職して今月末で3年になりますが、執筆依頼が来ることはありがたいことですので、依頼があった場合には引き続き、執筆していきたいと考えております。