院長ブログ blog

浜松医科大学でゲノム薬理学・薬理遺伝学の講義してきました。

2025.06.30

昨年に引き続き、本年も浜松医科大学にてゲノム薬理学・薬理遺伝学の講義をしてきました。

お薬を内服した際の効果や有害事象の個人差に、遺伝的な要因が関わっているということに関する講義です。以前はがんゲノムも含めて講義しておりましたが、講義時間が90分から60分になったことで、がんゲノムの部分は縮小し、薬理遺伝学の本丸の部分の講義を行ってきました。

 多くの方が内服している、ワルファリンや、抗血小板薬のクロピドグレル、高コレステロール治療薬のスタチン、てんかん治療薬のカルバマゼピン、アミノ配糖体での聴覚神経障害等々の多くの薬の効果や副作用に遺伝子多型が関与しております。

 例えば、抗凝固薬であるワルファリンの内服量は個々で大きく異なります。何故ならば、年齢や体重以外にワルファリンの代謝酵素やビタミンKの代謝に関わる遺伝子多型がワルファリンの血中濃度や効果に関わっているからです。逆にこうした遺伝子多型を事前に検査できれば、適切な初期投与量を設定することも可能です。しかし、こうした一般薬に関わる遺伝子多型検査の社会実装は、がん治療領域と異なりほとんど進んでおりません。現在、日本臨床薬理学会では、この問題を解決すべく、内保連経由でCYP2C19と薬疹に関わるHLAの遺伝子多型検査の提案を行っております。私も提出書類の作成に協力させていただいております。これらの提案がとおれば、これを皮切りに多くの遺伝子多型検査の認可も通り、一般薬治療に関するパネル検査へ発展する道筋が見えてきます。それよって、より安全で有効な薬物療法にの実現につながると思っております。