新年おめでとうございます。
2025.01.01
新年おめでとうございます。
皆さまには健やかに新年をお迎えのこととこころよりお慶び申し上げます。
旧年中は当院に賜りました数々のご厚情とご支援に対しまして、職員一同心より御礼申し上げます。
2024年は新型コロナウイルス感染症に加えてインフルエンザも流行し発熱外来を受診される患者様が急増し、一般外来の診療予約をいただいた患者様を予約時間でのご案内が難しくお待たせする状況が発生し、受診された患者様・ご家族様には多大なご迷惑をおかけしました。深くお詫び申し上げます。本年は、お待ちいただく時間が少しでも短くなるよう、職員一同知恵を絞っていろいろと工夫をしていきたいと考えております。
本年も引き続き、かかりつけ医として患者様・ご家族様が安心して頼れるクリニックを目指し、腫瘍性病変も生活習慣病も早期に診断して、地域の皆様の健康を守れるようにスタッフ全員で努力してまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
ふるた内科クリニック 院長 古田隆久
2024年の診療実績 ― 主に消化器関連検査について –
当院では消化器関連の検査を行っております。2024年の成績をふりかえってみました。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)は1092件行いました。ピロリ菌の感染状況は全例で評価しており、現感染が99例、既感染が472例、未感染520で、1例は胃全摘後のため判定不能でした。
腫瘍性の病変:
食道:食道扁平上皮内腫瘍(SIN):14例、
早期食道扁平上皮癌:4例
胃: 腺腫:4例(うち2例はHP陰性、2例は既感染)
MALTリンパ腫:1例(HP既感染)
早期胃癌:4例(HP現感染:1例、既感染:1例、未感染:2例)
進行胃癌:2例(いずれもHP既感染)
十二指腸:腺腫:3例
食道・胃・十二指腸の病変を合計すると、胃カメラ検査を受けた方の約3%の方で何らかの腫瘍性病変が発見されたこととなります。SINは磐田病院消化器内科の先生との相談の上、半年後に再検し、再現性がある場合には治療を行うこととしており、数例で治療していただいております。それ以外の早期癌や腺腫は浜松医大、磐田市立総合病院、聖隷浜松病院の消化器内科で内視鏡的に治療してもらいました。非腫瘍性病変では逆流性食道炎、好酸球性食道炎、胃十二指腸潰瘍、自己免疫性胃炎、好酸球性胃炎等々を複数例で認め、内科的に対応しました。
ピロリ菌の陽性例は99例でした。当院ではスマートジーンという遺伝子検査機器を導入しており、ピロリ菌の存在診断のみならず、クラリスロマイシンという1次除菌薬に含まれる抗菌薬へピロリ菌の耐性変異の有無まで検査できるため、1次除菌から個別化された除菌が可能となっております。そんな状況で、1次除菌から3次除菌、薬物過敏での除菌療法、多剤併用中の除菌療法など、様々な除菌治療を行いました。昨年中に除菌判定まで行えた方は81例で、最終的には2回目の除菌を希望しなかった1例を除いて全例で除菌成功することが出来ております。
ピロリ菌以外のヘリコバクター属(Non-Helicobacter pylori Helicobacter: NHPH)による胃炎も5例で診断し、除菌治療を行い成功しております。
下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査)は636件で行いました。
腺腫・癌発見総数:311例(ADR:49%)
内、大腸がん:18例(腺腫内癌11例、進行癌7例)
虚血性腸炎:45例
潰瘍性大腸炎:21例
粘膜下腫瘍:3例
その他
大腸内視鏡検査を受けた約半数の方で腫瘍性病変が発見されたこととなります。発見された病変は、当院で切除可能な病変は可及的に切除しました。20個以上の腺腫性ポリープを切除された方もおりました。クリニックで行える粘膜切除術(EMR)では一括切除が困難な大きい病変は患者さんの希望に応じて磐田市立総合病院や浜松医科大学、聖隷浜松病院、聖隷三方原病院へご紹介させていただきました。当院で内視鏡的に切除しえた病変の中で腺腫内がんは11例で認めました。手術の必要な進行がんは7例であり、殆どが磐田市立総合病院の外科で治療していただけました。昨年は早期癌と進行癌を合わせて大腸がんは18例発見したこととなり、大腸内視鏡検査35件あたりで大腸がんが1例見つかったこととなります。
非腫瘍性病変としては虚血性腸炎が多かったです。また、潰瘍性大腸炎(UC)は浜松医大時代から通院されている方に比して、当院新規発見の方は16例と多く、炎症性腸疾患の増加を実感した次第です。直腸炎の方が多いですが、全大腸炎型の方も数名おりました。他に、粘膜下腫瘍、憩室、直腸粘膜脱症候群、内痔核等々の病変を診断させていただいております。憩室出血では検査中に出血性の憩室が確認でき、止血処置も行えました。
腹部ECHO検査は306例で行い、脂肪肝108例、肝血管腫16例、肝嚢胞14例、肝硬変1例でした。胆嚢では、ポリープ37例、胆石22例、胆泥16、腺筋腫症7例、胆嚢炎2例でした。膵癌は2例で1例は早期であり磐田病院で手術していただけました。腎臓でも嚢胞や結石も多数発見され、膀胱の腫瘍も1例発見し磐田病院の泌尿器科にて治療していただきました。
私は浜松医大在籍中に、ペプシノゲン法による胃がん検診を考案した三木一正先生の厚労研究班(三木班)に研究協力者として留学する2001年まで参加させていただき、ABCリスク検診(血清ペプシノゲンと抗ピロリ菌IgG抗体価を測定して胃がんのリスクを評価する検診方法)の考案に協力させていただいた時期があります。ですのでABC検診の推奨派で、この簡便な血液検査での検診なら受診者は増えて内視鏡検査を受ける方も増えて早期胃癌発見数の増加につながると思ってきました。しかし、当院で発見された胃腺腫や胃がんの多くはABCリスク検診では拾いきれない可能性があり、内視鏡検診の必要性を強く感じております。一昨年はピロリ菌陰性の進行胃がんも発見しました。むしろ、ABCリスク検診でA群判定(胃がんリスク:低)のために内視鏡を受けなくてもよいと誤解される方が増えることを危惧したりもします。ABCリスク検診の説明文書ではA群判定でも一度は内視鏡検査を受けることを推奨しております。ABCリスク検診が有用であるとは今でも思っておりますが、やはり直接診断できる内視鏡検査を勧奨していきたいと思います。内視鏡検査を受けてくれれば、胃病変以外にも咽喉頭、食道、十二指腸の早期病変の診断ができます。早期食道癌の4例のうち、ピロリ菌の除菌後は1例で、残りの3例は未感染でした。浜松市の胃がん検診に関わっていましたが、浜松市は内視鏡検診を行っていたため胃がんだけでなく、食道や十二指腸の病変も拾い上げておりました。当院の受診患者さんには、生活習慣病で通院されている方にも胃の検診をおこなっているかを確認しておりますが、胃のバリウム検査を受けていると言われると強くは言えませんが、なるべく多くの方に内視鏡検査を受けていただき、悪性疾患の早期発見に努めていきたいと考えております。
大腸の進行癌の方で、前年まで便潜血検査がずっと陰性であったとおっしゃっている方もおりました。上行結腸の癌は便潜血検査では偽陰性になりやすいことが以前より知られております。30歳代での進行大腸がんの方もいらっしゃいました。ですので、あまり年齢を気にせずに、胃カメラ同様、なるべく多くの方に大腸内視鏡検査を受けていただき、悪性疾患の早期発見、腺腫性ポリープの切除による癌の芽の刈り取りに努めていきたいと考えております。そのためには、世間一般に広がっている大腸内視鏡検査は痛くて大変であるという悪評を払拭すべく、今後も苦痛のない検査に努めていきたいと思っております。当院の大腸内視鏡検査は枠にまだまだ余裕がありますので、さらに多くの方の検査を行っていきたいと考えております。