院長ブログ blog

医事新報の最新号に総説が掲載されました。

2024.08.02

 医事新報は、数ある医学雑誌の中でもとても歴史のある医学雑誌です。その最新号に私の総説が掲載されました。テーマは胃酸分泌抑制薬のプロトンポンプ阻害薬(以下、PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(以下、P-CAB)の使い方についてです。日本では、他にヒスタミンH2受容体拮抗薬(以下、H2RA)も使用されていますが、今回の特集では誌面の関係から省くこととしました。PPIもP-CABもH2RAも浜松医大在籍時にいろいろと研究を行ったため、このあたりの薬についてはいろいろな思いもあります。

 本邦ではPPIは4種類、H2RAは6種類ありますが、P-CABはボノプラザン(商品名:タケキャブ、以下VPZ)のみです。胃酸分泌抑制作用の比較では、VPZが最も強力で、それにPPI>H2RAの順に続きます。VPZはPPIでも治りにくかった重症の逆流性食道炎の治癒率を向上させ、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌率も著しく改善させました。そのためVPZの使用頻度は本邦で急増しているようです。ただ、強すぎる胃酸分泌抑制薬の長期投与の安全性についてはまだ議論が続いている状態ですし、酸関連疾患とはいっても半量のPPIやH2RAのようなほどよい胃酸分泌抑制薬が適した場合もあります。胃酸分泌抑制薬にはそれぞれのポジショニングがあるのでそれを理解した使い分けが肝要と考えております。私は、診療ガイドラインやこれまでの経験を踏まえて、個々の患者さんにベストの胃酸分泌抑制薬を選択するよう心がけています。