ピロリ菌学会に参加してきました。
2025.07.13
7月11−12日に淡路島の淡路夢舞台国際会議場で開催された第31回日本ヘリコバクター学会学術集会に参加してきました。学会ではピロリ菌感染と自己免疫性胃炎に関するワークショップの司会を担当し、また当院で経験した除菌治療について報告してきました。また、関連する多くの発表を聴講し、質問もいくつしてきました。
自己免疫性胃炎は、自己免疫機序によって胃の壁細胞が傷害されて高度の胃粘膜萎縮を来す疾患で、殆ど胃酸が分泌されず、それに呼応して高ガストリン血症を呈します。そして、鉄欠乏性貧血や悪性貧血、神経疾患の原因となったり、胃癌や胃の神経内分泌腫瘍の発生率が高い疾患です。病因は不明ですが、発症のきっかけや病態にピロリ菌が関わることもあります。ただ、両者の関係は十分には解明されておらず、結論が出ておりません。ですので今回のワークショップでは、本当にホットなディスカッションがくり返され、司会者としても十分に楽しめました。

除菌治療の発表ですが、当院には本当に遠方からもピロリ菌の救済療法で受診される方がいらっしゃいます。浜松医大の頃には、北は気仙沼、南は沖縄、そして中国からもはるばる受診された方がおりましたが、開業してからも県外からの複数の方が受診されております。最も遠方は山口県の方ですが、見事に除菌成功することができました。浜松医大のときから種々の除菌治療を行って来ましたが、ミノサイクリンを用いた救済療法は開業後も自費診療で行っており、そうした治療の成績を報告してきました。

今回のピロリ菌学会の最も大きなテーマは、ピロリ菌対策を通じての胃癌の撲滅です。未成年者、20歳から成人病検診をうけるまでの世代、健診受診世代とそれぞれの対策が必要です。今回の学会ではそれぞれの世代に応じたピロリ菌対策についての熱い議論がなされました。ピロリ菌の除菌療法の普及や感染率の低下にて胃癌は徐々に減ってはおりますが、いまだに日本人のがん死亡の上位に位置する頻度の高い悪性腫瘍です。このがんはピロリ菌の除菌による予防効果が相当程度に期待できるため、積極的なピロリ菌対策が必要です。開業して今年の秋で3年になりますが、せっかくピロリ菌のことを研究してきたこともあり、磐田市においても何らかのアクションを起こさねばと思った次第です。